モノづくりと森づくりが
ひと続きにつながる地域社会へ
都市文化を支えたモノづくりの源流の地「京北」
から考える、これからのモノづくり
Fab Village Keihokuがある「京北(京都市京北地域)」は、平安遷都にあたり都を造営するための木材を供給するために拓かれた山間の郷。以来、禁裏御料地として誇り高い杣師によって山が丁寧に手入れされ、都市の発展とともに建築材を供給する林業的基盤が確立されてきました。戦後復興の拡大造林期に、この地域でもスギ・ヒノキが隈なく植栽されましたが、昭和51年に木材輸入が自由化され、この歴史ある林業の地もまた、輸入材との競争の中で地域の材の出口を見出す挑戦を続けています。Fab Village Keihokuはこの「モノづくりの源流」ともいえる京北で、私たちの暮らしと街のあり方の連動を支える自然資源と、それらの自然資源を育む環境について考えることの意義を、探求しています。
「工藝」に学ぶモノづくりのサステナビリティと、
FABカルチャーで広げるモノづくりの主体者
Fab Village Keihokuの運営母体、一般社団法人パースペクティブは、工藝に培われたサステナブルな社会へのヒントをこれからの社会に役立て、私たちにとって本当に大切なものを守るためのモノづくりを促進することを目的に、工藝の作り手と伝え手によって生まれました。一方、Fab Villageのインスピレーションの由来である「Fabカルチャー」は、モノづくりの民主化を目指して生まれた世界的なムーブメントです。大量生産によってブラックボックス化してしまったモノづくりを解放し、デジタルテクノロジーと地域の資源を活用して、モノづくりにより多くの人が関わることで、資源が小さく循環するサイクルを生み出そうとする、草の根の活動です。Fab Village Keihokuは、都を作った工藝文化の伝統的な知恵と、森の資源とを活用し、循環社会へ向けたモノづくりへの市民参加を促進します。
「つくる」ことで探究する、私たちの社会のこと。
森も、流域も、私たちのフィールド
「モノづくりの主体者」になることは、モノづくりが社会とどのような関係を歩んできたかを学ぶことでもあります。都を作り街の暮らしを豊かに快適にしようとする過程で、京北の森も姿を変えてきたように、人の暮らしと景観は、川上と川下の間で密接に連動します。「つくる」ことを通して、私たちはそうしたものづくりと社会の関係性について学ぶ機会を提供します。私たちは、森づくりにも挑戦しています。Fab Village Keihokuから車で10分程度の距離にある、京都市合併記念の森では、漆を中心とした工藝素材の植栽を行い、またその敷地全体を、森と人の暮らしとの関わりについて学ぶフィールドとして活用しています。植樹や森林整備の作業を通して人が関与することで、植生が変わったり水や風の流れが変わったりする森は、私たちにとって同様に「つくるフィールド」であり、「学びのフィールド」でもあります。
Team
FVKには、得意分野が異なる木工職人が3名所属しています。機械の操作、デザイン、素材の活かし方など、相談しながらモノづくりに挑戦できます。
TAKAMURO SACHIKO
企画・広報担当
森とモノづくりの生態系が絡み合う世界を探索中。次の時代もモノと関わり続ける人々とともに、「つくる」歓びと可能性と責任とを共有するコンテンツを発信、教育プログラムやツアーを企画しています。一社)パースペクティブ共同代表。
TSUTSUMI TAKUYA
漆担当
家業は明治期より漆の精製業を営む堤淺吉漆店。サーファー/2児の父。漆を育て収集する山側の「漆掻き職人」と、漆を塗る「塗師」の中間に立つ立場から、漆のある暮らしを次世代の子ども達につなぐ取り組みを数多く手がける。一社)パースペクティブ共同代。
TAKAMURO HISASHI
職人
京北生まれ、京北育ちの木工職人。家具から暮らしの小物まで、自然木の個性的な表情を活かした、温かみと揺らぎのあるデザインが特徴です。地元のネットワークを活かした材料調達もお任せください。
YOSHIDA SEIYA
職人
愛知県出身。京都の指物師。伝統的な組手を用いたものづくりを得意とします。墨つけから仕上げまで、鉋や鑿など様々な手道具の使い方を手解きします。
UEDA KAZUHIRO
職人
京都のろくろ木地師。ろくろを使用した日本の伝統的な木の器や漆器の下地づくりを得意とします。ろくろより手軽に器づくりにチャレンジできる西洋式木工旋盤の使用方法も習得しており、器づくりの相談ならお任せください。
MORITA ATSURO
人類学者/エスノグラファー
大阪大学人間科学研究科・人類学研究室(科学技術と文化ユニット)所属、Ethnography Lab 代表。専門は科学技術の人類学、デザイン人類学。大規模な技術システムであるインフラストラクチャーを媒介とした環境(気候変動)、日常生活、政治の相互関係について研究してきた。トランジション・デザインに貢献するデザイン人類学や、「つくること」を社会調査に取り入れるクリティカル・メイキングの試みも行っている。
TSUDA KAZUTOSHI
工学博士
1981年、岡山県新庄村生まれ。博士(工学)。京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構 講師、山口情報芸術センター[YCAM]専門委員(主任研究員)。ファブラボジャパンネットワーク、ファブラボ北加賀屋(大阪)共同設立メンバー。研究領域は、資源循環、サステイナビリティ。ものの流れに着目しながら、自然環境と人の関係性について考察している。共著に『サーキュラーデザイン』(学芸出版社、2022年)など。
network
- 大阪大学Ethnography Lab
- 京都工芸繊維大学サステイナビリティ研究室
- 京北森林組合
- 田中木材
- 吉田木工