エスノグラフィをとおして学ぶ「環境とともにデザインする」ということ 〜 ラーニングツアー in 京都・京北 Vol.2
ファブビレッジ京北ラボは、森とつながる工藝的なモノづくりと、フィールドから知識を生み出す人類学に立脚して、持続可能な世界のためのリサーチとデザインを探究しています。
本プログラムは、仕事や人生の探究に具体的に役立つ実践的なプログラムとしてファブビレッジ京北のために開発されましたが、第1回目の参加者の皆さんが鮮明な視点の転換を経験され、共有してくださっていることに確かな手応えを得て、シリーズ化が決まりました!
このツアーでは、既成概念を外して世界を見るエスノグラフィの手法をベースに、人間中心の姿勢から脱却するデザイン姿勢を体験的に考えます。また、この姿勢を生かすために、暮らし・テクノロジー・産業を結びつけて考える「インフラストラクチャー」の視点を学びます。
気候変動をはじめとする環境危機の中で、生活、ビジネス、社会のあり方は大きな変化を迫られています。ここ数年の間に、トランジション(持続可能な社会への移行)、脱炭素化(化石燃料の使用の削減・停止)、循環経済といった新たなキーワードが登場してきました。
そこで求められているのは、近代化の中で激しく対立するようになってきたテクノロジーや生産システムと生態系のプロセスを再び結び合わせることです。
そのためには、人間のためのデザインから他の生物や環境プロセスとともにデザインする姿勢への転換が重要になってきます。本スタディツアーでは、オンライン講義と京都市右京区京北地域にある循環型市民工房「ファブビレッジ京北(F V K)」でのエスノグラフィ実習を通して、その鍵となる環境の中の他者から「影響される」受身のデザイン姿勢を学びます。
また、レクチャーではこの姿勢を実践に移す手助けとなる「インフラストラクチャー」の視点を学びます。この視点は、暮らしを支えると同時に環境負荷を生み出す物流やエネルギーなどインフラストラクチャーに注目して、暮らしと産業、環境をひとつながりのプロセスとして捉えます。
最終的なディスカッションでは、レクチャーと実習を結びつけ環境から「影響される」姿勢をいかに生活とインフラストラクチャーのデザインに導入できるのかを考えます。
日程
2023年12月1日から4日(3泊4日)
開催地
京都市右京区京北上弓削町弾正27 旧京北第三小学校内 ファブビレッジ京北
※ツアー集合場所は京都市内、解散場所は京北になります。京北からはバスで1時間程度で市内に出ることができます。
※京北までの移動手段の検討のため(レンタカー、バスなど)、参加者の皆様のマイカーのご利用の可能性や、免許の有無など、お申し込み時にお伺いしています。
料金
1名様 7万円(定員12名)
※宿泊費、食費は含みません。開催地の地域の特性上、宿泊、お食事をする場所の選択肢が限られています。参加者の方々が交流いただけるよう、またツアーの行程がスムーズに進むよう、宿泊・お食事の手配は主催者が行います。宿泊代として一泊4,000円、お食事代として一日4,500円をご用意ください。この範囲内で手配いたします。(ツアー中通算で合計30,000円の予算)
主催
一般社団法人パースペクティブ
平安京創設のための木材供給を担った京都の中山間地域・京北を活動拠点とする。自然を起点とし、自然のサイクルに従うモノづくりとしての「工藝」が培う知恵を編集し、共有する。工芸素材の育樹を通して自然を起点として循環するモノづくりのあり方を学ぶ「工藝の森」、工芸素材や地域産木材を使ってより多くの人を「作る」当事者にする市民工房「ファブビレッジ京北(F V K)」をコモンズとして運営。
講師プロフィール
高室幸子
森とモノづくりの生態系が絡み合う世界を探索中。次の時代もモノと関わり続ける人々とともに、「つくる」歓びと可能性と責任とを共有するコンテンツを発信、教育プログラムやツアーを企画しています。一社)パースペクティブ共同代表。
森田敦郎
人類学者。テクノロジー・社会・環境の関係をエスノグラフィの手法を通して研究してきた。とくに、日々の暮らしが環境・気候危機といかに繋がっているのかを、物流、エネルギー、生産などのインフラストラクチャーに注目して理解しようとしてきた。工藝をモデルに循環型モノづくりを目指すパースペクティブの理念に共感し、ファブビレッジ京北のラボ事業に参加。「つくること」を通して、暮らしを支えるテクノロジーと環境の関係を知り、草の根の力で持続可能なインフラストラクチャーを生み出すクリティカル・メイキングの試みを行っている。
ツアーの構成
※「レクチャー」は40分程度のミニ講義、「セミナー」は講師の問題提起に基づく60分程度のディスカッション中心のセッションです。
事前オンライン講義
※ 日程はご参加予定の皆様と調整して決定します。11月後半を予定しています。
l トランジションの課題:日常生活と産業
l インフラストラクチャーという視点
l 日常生活と産業を媒介する視点
12月1日 ツアー1日目
午前:京都市内集合
l 自己紹介、地域についての導入レクチャー
l 京北へ移動
午後
l 森を歩く:「気付きの技法(art of noticing /Anna Tsing)」と人間以上の世界としての森
l セミナー「気付きの技法としてのエスノグラフィと工芸のセンシビリティ」
l レクチャー「トランジションのためのデザイン入門(Designs for the Pluriverseを中心に)」
12月2日 ツアー2日目
午前
l 気付きの実習:FVKでの職人仕事の観察を通して、知覚のフィルターを外すための人類学的観察の実習
l 知覚のフィルターに気づくためのフィールドノートの作成実習
午後
l エクスカーション1「眺木的工房」:職人の「訓練された視覚(skilled vision)」を学ぶ
l フィールドノート作成続き+シェア
l フィールドノートの比較
セミナー「影響されることを学ぶ:ブルーノ・ラトゥールの情動論」
12月3日 ツアー3日目
午前
l レクチャー「聞くことの技法:エスノグラフィックなインタビューとは?」
l インタビューの実習
午後
l インタビューの書き起こしと比較
l 見えなかったものを見出す技法としての質的データ分析
l データ分析ミニ実習
l セミナー「人間以上の世界とフローへの気づきとインフラストラクチャー」
12月4日 ツアー4日目
午前
l レクチャー「人間以上の世界におけるテクノロジーとエコロジー」
l セミナー「『影響されること』から生まれるデザインとは何か?」
午後
l 振り返りセッション
l 京北にて解散
スタディツアーの特徴
(1)気候と環境の危機に対応するために求められている変革を、産業と生活という二つの側面の連関を通して捉えるユニークな視点。本ツアーでは、温暖化ガスの排出や物質の循環を通して環境に影響を与える産業を、生活を維持する基盤としての大規模技術システム、インフラストラクチャーとして捉えます。これによって、しばしば二つに分かれがちな産業の変革とライフスタイルの変容とをつなげて考えることを可能にします。
(2)変化のために必要な視点として、デザインやプランニングについての見方の転換を中心に据えます。近代のビジネスでは主体となる人や組織が、自らの価値に基づいて枠組みを定め、それをベースに事業をデザインしていきます。このような近代的なデザインの思考は、結果的に環境の複雑なプロセスや他の生物種の存在を無視し、複雑さによって維持される生態系を破壊してきました。この見方を転換するためには、自らの合理性に則って対象に働きかけるのではなく、環境の中の他者の求めるものに反応し、その影響下で自らが変わりながら環境に働きかける姿勢が必要とされます。本講座では、一部の研究者が「影響されることを学ぶ」と呼ぶこのプロセスを中心に据えます。
(3)こうした視点の転換を実際の経験に基づいて学んでいただきます。本講座では、人類学の調査法であるエスノグラフィのトレーニングをもとにして、自らの思考の枠組みを外し対象の中の多様な差異に気づいていくための実習を行います。ここでは、自らの感覚を研ぎ澄ませるだけでなく、フィールドノートの記録などを通して自分自身の視点を振り返る手法も体験します。このように手近なメディアを自身で作ることで、環境や他者からより繊細に影響を受ける感受性を磨く手法を学ぶことができます。
本スタディツアーでは、工藝にインスピレーションを得てモノづくりと森づくりを結びつける活動を行なっている高室幸子と人類学およびインフラストラクチャーの研究者である森田敦郎が講師を務めます。上記の講座内容に加えて、ディスカッションでは講師たちの専門知識に基づく討論が行われ、幅広い学びを経験することができます。
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3日前〜1日前 20,000円
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